■顔が見える、環境が見えるお米を!

おいしいお米の入手方法でも触れましたが、
安心でおいしいお米を買うには、

・昔からの米どころと言われる場所で、自然が多く環境の良い場所が産地のものを選ぶこと
・できるだけ情報開示しているところから買うこと
・できるだけ中間にたくさん業者が入らないところから買うこと

の3点に気をつけることを挙げました。

わたしたち奥出雲食房のお米は

・奈良時代から有名な米どころである「奥出雲町」のブランド米「仁多米」をお届け
・農薬や化学肥料だけでなく、周囲の環境、農家さんの取り組み方に関しても調査
・農薬や田んぼの状況をインタビューやブログの形式で公開
・農家さんから直接仕入れをして販売
・常に自分たちの食卓で味をチェック、食味コンクールの受賞米も取り扱う

という形を取っており、種類は少ないですが、他のお米の通販サイトに比べて
安心できるものになっていると思います。
また、味に関しても、どれも自信を持っておすすめできるものです。

お試しセットもご用意していますので、ぜひ一度ご賞味下さいませ。


■日本一美味しいお米!渡部悦義さんへのインタビュー

「えっちゃん」こと、渡部悦義さんは、無農薬のお米を追求して20年。
なんと2005年、えっちゃんの田んぼのお米は、米食味コンクールで金賞を受賞しました。
そして続いて2006年度のコンクールでも特別優秀賞を受賞。

つまり、米食味鑑定士=お米のソムリエたちに、日本一おいしいお米のひとつと認定されたのです。

そんなえっちゃんの田んぼは、奥出雲地域でも山深い阿井(あい)地区の、一番奥にあります。
中でも、金賞にかがやいたお米の田んぼはの田んぼは、周りを山で囲まれた、本当に奥の奥の田んぼです。
周囲の環境はといえば、もちろん、空気も景色もめちゃくちゃきれい!
そして、なんと、田んぼの脇には、湧き水が湧きでていて、わさびが自生するほどの水の美しさ。
人間がそのまま飲める美味しい、きれいな湧き水です。
それがそのまんま田んぼに張られています。
一番上流なので汚染物質や農薬が入り込む隙なんてありません。
…どうです、これって、おいしいお米の条件そのまんまでしょ!?

こんな田んぼで、生態系に影響しないよう、農薬、はてはマルチやアイガモなどにすら頼らず、
手作業で草取りしながら丹精こめて育てられているお米ですから、
それはそれは、山の気の満ちたスピリチュアルな感じのするおいしさ。

えっちゃん自身も…超がつくほど、バイタリティあふれる、すごい人です。
フットワークが軽くて、顔も広くて…。二十年前、環境問題への興味をきっかけに
無農薬の米づくりを始めたというその先見の明にもおどろかされます。

口コミでじわじわファンが広がってきているえっちゃんは、味はもちろん、そのお人柄に惹かれてお米を買っている人も多いようです。

そんなえっちゃんに、インタビューでいろいろとうかがってきました。

★無農薬の米づくりに挑戦することになったきっかけは何だったんですか?

20年ほど前にね、(鳥取県の)倉吉で、温暖化とか、森林伐採とか、酸性雨とかで、「地球が大変だ」という講演会を聞いたのがきっかけでね。それから、環境のことに興味を持って、(奥出雲町佐白の)多根の自然博物館なんかで一生懸命地球のことを勉強してね。
長い地球の歴史から言えば、人類はほんの針でついたくらいの時間しか生きちょらんのに、その間に地球の環境をすっかりダメにしようとしちょる。
これじゃあいけん、と思って、安全なものを作って、持続可能な農業をしようと思ったんだわ。それに、その頃出会った本で、普通の市場原理に巻き込まれると、ごく普通の人間は必ず行きづまるようになっている、というのを読んでね。自分の生活を成立させるのは難しいけど、人が本当に喜ぶことをしていくようにすれば、自分に共感してくれる人が現れて、だんだん楽しくなってくる、っていう風に書いてあって、自分はそういう道を選ぼうと思ったんだわね。

★それから、色々と苦労をされたとききました。

そうそう、最初はね、周りにも笑われてね、だいぶ失敗したがね。アイガモを飼ったら、ぜーんぶ、キツネに取られてしまったり。安全でおいしいお米にしようと、土壌改良のために、かなりお金もつぎこんでね。(鳥取の)境港までわざわざ行って、カニの殻をもらってきたり、ヤシガラの活性炭を試したり。無農薬だと、収量も少なくなるし、採算は度外視だわね。

★金賞を受賞したのには、どんな秘密があるんですか?

近年は、ミネラルと微生物の土壌改良をしているよ。海洋深層水とミネラルの土壌改良剤で、田んぼに流したり、他にも、炭を入れたり、工夫をしちょるよ。
でも正直言って、今までの何がどう効いておいしいお米になったのかはわからんね(笑)

だいたい、おいしいお米の条件として言われてるのは、昼夜の温度差、まさ土(花崗岩質)を通ったミネラル水、日照時間、水環境がいいことだわね。
同じ仁多米でも、ちょっと標高が高すぎるとあんまりおいしくなくなったりすーらしいね。

★悦義さんの田んぼでは、田植えから収穫までは、どんな流れなんですか?

まず、5月の後半、20日ころに田植えをする。

食味コンクールや、奥出雲食房さんには出していないけど、除草剤をまく田んぼがあるのだけど、その場合は、田植えから10日か15日以内に1回だけまく。
そうすると、まだ小さい雑草は全部きれいに溶けてなくなってしまう。こわいね~。大きくなった草には効かないんだけどね。イネが伸びると、雑草は日陰になって生えにくくなるけん、この1回でかなり雑草を防げるんだわ。

無農薬の田んぼは、風が強いから、マルチなんかの横着なことはできんけん、無農薬だと、地元のシルバー人材サービスで、お年寄りを頼んだりしてひたすら草取りをすーよ。

収穫は、年によってちがうけど、去年は9月。はで干し(天日干し)の場合は、20日間干しておくので、10月に出荷だったね。

はで干しにもコツがあってね。晴れの日を狙ってイネを刈って、ハデに干す前に、一度土の上で乾かしておいて、それからハデに干すと、イネ自体が軽くなって扱いやすいんだよ。

★えっちゃんは無農薬に取り組んでおられますが、それに対して普通の農法は、だいたい、どんな感じで農薬を使うんですか?

まず種もみの時にね、タチガレンという立ち枯れ防止剤をかける。何回か使う人もおられーよ。それから、田植えの時に、イモチ病、モンガレ病、害虫防止の混合剤を入れる。それから田植えの前後には、除草剤もまくね。これも、2、3回使う人もおられーね。秋にも出水前後に混合剤を2、3回使うね。

★そんなに使うんですね。では、いまの農業のスタイルで、いいことはどんなことですか?

いまは、お米は、収量が少なかったりで、普通に農協に買ってもらってると、とてもじゃないけど採算が合わんけん、多少高くても納得して買ってくれる人に、自分ができる範囲で売ってるよ。この方法だと、お客さんと直接顔の見える関係になって、信頼関係が築けるのがうれしいね~。時間はかかるけど、だんだん口コミでお客さんが増えてきてね。

それに、本物を追求していくことは、勉強に終わりがないけん、本当に面白いよ~。

こんなえっちゃんの努力も一役二役かって、今年2007年11月には「平成18年度米・食味鑑定士コンクール」が、奥出雲町で開催されることになりました。
都市部以外の郡部での開催は初めてです。
是非、多くの方に来ていただきたいものです。


■仁多米の有機農業の先駆者 佐藤順一さんグループのお米

奥出雲町で約20年間、お米の有機農業に取り組む「マザーシップ」というグループがあります。
その中心になっているのが佐藤順一さんです。

佐藤さんは、1985年ごろ、内臓を悪くされ、血尿が出て微熱が続く状態だったそうです。
そんなとき、「マクロビオティック」の世界的権威である久司道夫氏の妻、偕子夫人が地元である奥出雲町(当時の横田町)で講演を聞きました。
佐藤さんは、すっかり感銘を受けられ、すぐにアメリカ行きを決意。

アメリカでは久司道夫氏から10日間マンツーマンで直々に講義を受け、体調不良もマクロビオティック料理ですぐに改善しました。帰国後は無農薬農業を推進し、グループ作りをしたり、外国から研修生を招いたり、マクロビオティックの権威の先生を招いたり、積極的にさまざまな活動をされました。その間4年間にわたり、久司夫妻は世界中から延べ300人余りのマクロビアンを横田に連れて来られ、田植えや稲刈りなどの米作りを行い、また町民との交流も深めました。この時横田を訪れた多くの方が現在KIIやKIJのインストラクタとして活躍されています。彼の名前は、久司偕子夫人の自叙伝にも登場します。

周囲を省みず、精力的にマクロビオティックを推進していた佐藤さんに、やがて転機が訪れます。
それはお子さんの病気でした。

当時4歳ほどだったお子さんが白血病に倒れてしまったのです。
佐藤さんはそれを現代医学に頼らず、マクロビオティックで治そうとしました。
しかし一向に改善しませんでした。

難病ということで治療費も免除され、担当のお医者さんも大変に手を尽くしてくれている中、
佐藤さんは、自分の執着心が、お子さんの命運の前に立ちはだかっている大きな壁であることをさとります。

その瞬間から、お子さんの病気は回復に向かいはじめました。
お子さんはその後、何事もなく、元気に育っています。

佐藤さんの積極的な活動により、奥出雲町にうまれたお米の有機農業のグループは、
コダワリなく、今そこにある自然を信じる農業を目指しながら
その後ゆるやかに地に足を付けた活動を続けています。


(佐藤さんと奥さんです)

★米作りで大変なことは何ですか?

何が大変かといえば、除草です。
草の中で米が育つような米作りが3~4年続きました。その草もたった一握りの除草剤をまくと、
10アール(300坪)面積に1本も見られなくなるんです。まさに超猛毒ですよね。

★そんな大変な思いをして有機農業に取り組まれているわけは?

除草剤を使えば、作業はとてもラクになりますが、土や水は、失神してしまうでしょう。
一時的に、死んだも同然、まさに、不調和です。

不調和での米作りは、自然をそのまま届けることにならないと気づき、
消費者の方とも満足や安心を共に感じられる一体感が欲しくて、
化学肥料や農薬はやめることにしました。

わたしは、家族で取り組む農業が誰かのためとか子供達の未来のためとは思って
やっていません。農業は、自然や命が最も身近に感じられ、深い安らぎが得られるから
やっています。

★具体的にはどのように栽培されていますか?
まず、除草対策に使用されているという、紙マルチ農法について教えてください。

はい、除草対策には、再生紙の紙マルチ(土にかぶせる物のこと。日光を防ぎ、草が生えなくなる)を敷いています。
再生紙の紙を田植え機でしきながら同時に田植えをする乗用田植え機(三菱農機と共同開発した紙マルチ田植え機)で田植えをします。
紙は、100メートル巻き160cm幅と、125メートル巻180cm幅があり、50日ほどで溶けます。田植えから40~50日ほど除草期間があれば、後は稲が大きく育っていますので、除草の心配はありません。そのため、除草剤は必要ありません。

しかも、この農法は、兼業農家でもできますので、有機無農薬栽培は専業農家でなければできないということもないのです。

田植え機は、5条植えと6条植えがあり、両方とも紙を3本セットできます。紙は300坪(10アール)あたり約2万円かかります。また、田植え機も普通の田植え機の2倍の価格です。田植えのスピードも普通のものに比べて3倍近くかかり、そのため、慣行農法のものより、お値段が高くなっています。

★堆肥やボカシはどんなものを使っていますか?

堆肥は、牛糞・鶏糞・舞茸の菌床の廃床・米ぬかなどを混ぜたものを、エアレーション(空気を送れる)できる槽で、20トンを1単位として作ります。1週間ごとに切り返し、温度を80℃以上、湿度60%くらいを保ち、10週間くらいで出来上がります。
使うのは、4ヶ月置いたものを使います。

ボカシは、米ぬか、油粕、骨粉、赤土発酵、発酵豚糞、難糞、黒砂糖、焼酎などを混ぜ、これも1週間ごとに切り返し、2~3ヶ月発酵されたものを使用します。

10アール当たり、160kg~200kgです。

★化学肥料に比べたら、随分と手間がかかるものですね!
今、グループのお仲間はどのくらいいらっしゃいますか?

現在仲間20名くらい、面積は10ヘクタール弱で取り組んでいます。

★島根県の環境保全型農業推進コンクールの優良事例に選ばれたそうですが?

はい、島根県ではいち早く無農薬、環境保全を目指した農業に取り組み、高い評価を受けました。
県のモデルケースとなっているんですよ。

★佐藤さんにとって、農業のコツとは?

農業は、愛がなければできません。命を知っていなければ米は育ちません。
自然はわたしの意識をうつして見せてくれます。米作りをするとき、積み上げてきた経験を披露すると、
それなりの新しい課題をもたらしてくれます。
その課題への挑戦が農業の面白さだと思い込んでいました。
しかしそうではなかったのです。
自然は、一瞬一瞬をうつします。ひと時もその流れはとまりません。一つとして同じものは存在しません。
とどまることもなければ失うこともありません。ただ存在するのです。そこに今あるのが自然です。

最近、米や野菜を育てるコツがわかりました。
それは、判断をせず、見えない命がすべてを生かしていることを信じること、農業の面白さや本当の醍醐味を味わうには、いつも初めての気持ちで接することだと気づいたのです。

万物を生かす命は、過去や未来でなく、今を生かしています。「良い」「悪い」はその中には全くありません。
人間だけがそう思っているのです。携わる人以上の米ができないのは、そこに判断があるからです。
それをしなければ、命は米を通して命しか現しませんから、食卓には米を現している命が届くに違いないと思ったのです。
命とは安心のことです。そして、安心とは満足のことです。お米は、安心や満足が形になったものだと思えてきました。そして、その心こそが、米が育つのにこれ以上ない肥やしであると気づきました。